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鍼灸臨床研究
芹香病院 鍼灸治療研究室

長野式鍼灸 Kiiko Style

芹香病院では鍼灸(しんきゅう、はりきゅう)の精神科医療への臨床応用を研究しています。

これまで精神的に健康であったけれど、交通事故やスポーツで頭部・頚部・尾骨部を強打したり、頭部や下腹部の大きな手術を受けたりした後から、精神的に不安定で慢性的なうつ状態や集中困難などで悩んでいることはありませんか。

鍼灸(しんきゅう、はりきゅう)は気分障害(うつ病、躁うつ病など)に対する代替医療としてWHO(世界保健機関)をはじめ世界的に注目されています。抗うつ薬の目覚ましい普及にも関わらずアメリカや中国などにおいては、多くの人が「うつ」を主訴として鍼灸院を訪れています。故長野潔(ながの きよし)氏によって体系化された長野式鍼灸治療は、松本岐子(まつもと きいこ)氏によって腹診を中心とした岐子スタイルに翻訳され、西洋人にも比較的容易に実践出来る鍼灸技法として米国ボストンのハーバード大学に紹介され、同大学において採用され多くの医師がその実践を学んでいます。岐子スタイルの特徴は、腹診や触診、問診を中心に診断を行う点に加えて、鍼灸の精神活動への影響を重視している点が挙げられます。とくに、「頭部瘀血(とうぶおけつ)」という病態(頭部における血液の滞り)と「うつ」や注意・集中力の低下との関連性に着目し、鍼灸による「頭部瘀血」の改善が精神症状の改善につながるという長年の鍼灸臨床経験がその理論を裏付けています。「頭部瘀血」を来す契機としては、頭頸部の外傷や手術、尾骨部の強打、下腹部の手術、産褥期などが挙げられます。また「頭部瘀血」は契機となったイベントの数ヶ月後、数年後に顕現化することも稀ではないため、長年の古傷を癒すことによって現在の精神状態を改善できる可能性もあると言われております。
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主な対象となる患者様は、慢性的なうつ状態と以下に挙げた病歴や特徴をもっているかたになります。
1) 頭頸部や尾骨部の外傷(交通外傷、スポーツ外傷など)
2) 頭頸部や下腹部(婦人科疾患など)の手術歴
3) 産後うつ病
4) その他、「頭部瘀血」の身体所見を示すうつ状態
精神医学では「頭部外傷後精神障害」「脳震盪後症候群」などと呼ぶことがありますが、精神科薬物療法の効果が得られにくいうつ状態として知られています。また、「頭部瘀血」は「低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)」との関連性・類似性も指摘されています。

鍼灸は、当院の鍼灸治療研究室において、長野式鍼灸研究会にて松本岐子氏より指導を受けた経験豊富な鍼灸師(神奈川県非常勤職員)により行われます。1回のセッションが60分前後で、週に1~2回(火曜日と金曜日)、合計で5~10回を1研究クールとしています。問診に始まり、東洋医学的な診察(経穴などの触診が中心となります)を詳細に行った上で、鍼や灸による処置が行われ、セッションの終わりには再度診察が行われます。鍼灸が始まる前には、うつ症状の評価と前頭葉機能などの認知機能検査や脳波検査などを受けて頂きます。鍼灸開始以後も定期的にうつ症状の評価などを行います。当院では、東洋医学的な身体所見のスコア化(「K式鍼灸スコア」)にも取り組んでおり、より客観的なエビデンスを得られるよう努力しております。

2000年以上の歴史を有する鍼灸は身体にやさしく、安全でありますが、鍼灸と関連して起こりうる合併症としては、外傷性気胸、末梢神経障害、感染、鍼の皮膚埋没、刺鍼部の出血、お灸による熱傷などを挙げることができます。これらの合併症にたいする予防対策は、WHOの安全性に関するガイドライン(1999年)および、国内の鍼灸安全性委員会によるガイドライン(2006年)に準拠して行われます。使用される鍼は、JIS適合の滅菌済み単回使用毫鍼であるため感染の可能性は最小限となっています。

研究の対象となる患者様には神奈川県立精神医療センターの倫理委員会で承認された研究内容について、有害事象も含めて口頭及び書面による説明を行い、書面による同意を頂きます。不同意の場合でも診療上の不利益を被ることはないですし、同意はいつでも撤回出来ます。個人情報保護法遵守の観点から、個人情報が含まれるデータは全て匿名化した上で研究のための解析に使用されます。鍼灸に関わる費用の負担は一切ございません。

長野式研究会芹香病院鍼灸治療研究室
松本岐子先生(前列右)と長野式研究会の先生がた(後列)          芹香病院鍼灸治療研究室

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